RealSimCity構想

本ラボでは地理情報サイエンス(GIS)を軸とした、リアル空間におけるPrescriptive analytics(処方的分析)の実現を目指しています。

Prescriptive analytics(処方的分析)とは、データ分析のステップを3段階に分けた際の最終段階に当たります。

  1. 分析(Descriptive)
  2. 予測(Predictive)
  3. 処方(Prescriptive)

Eコマースの例

  • 分析(Descriptive) : ユーザーのサイト訪問・購買履歴から行動パターン・購買プロセスを集計・可視化
    • GoogleAnalytics などを活用し、サイエンティストに限らず、幅広い職種の方が分析しています
  • 予測(Predictive) : 過去の傾向や特徴から購買行動を予測したり、レコメンド
  • 処方(Prescriptive) : サイト上の配置やデザイン、価格等のコマースサイトそのものをダイナミックに最適化

Eコマースの初期の立ち上げ時は、創始者のセンスや嗅覚によってコマースサイトが形作られていきます。そしてユーザーの利用動向からニーズを汲み取って、進化させていきます。リアル空間としての都市空間においても同様に、人が使う空間としてつくられてきました。しかし、創設当初から少子高齢化や一極集中、働き方等による空間へのニーズのあり方がめまぐるしく変わり、変化に対応できなくなりつつあります。その結果として起きているのが、社会問題となって久しい空き家や待機児童問題、渋滞といった需給バランスの崩れです。都市空間の諸問題の解決にはデジタル空間におけるデータ活用に大きなヒントがあり、その最終形としての Prescriptive analytics(処方的分析) があると考えています。そうしてアプローチの先には人が集まり、心地よく生活するサステナブルな空間があると考えています。

デジタル空間においてもリアル空間においても Prescriptive analytics(処方的分析)の実現はまだ発展段階にありますが、リアル空間ではデータ取得や現象の複雑さからデジタル空間を対象としたデータ分析よりもさらに多くの未解決課題が残っていると考えています。このような背景から、本ラボではその一助になりたいと考えています。リアル空間におけるPrescriptive analytics(処方的分析)がコモディティ化した世界観として、コンピュータゲームで昔から有名なSimCityになぞり、 RealなSimCityの実現 を目指しています。IoT(古くはユビキタス)の浸透により、この世界観の実現は日に日に現実みを増しています。大学や企業といった所属にとらわれず、こうした思いを持つ同志を募集しています。

追記

リアル空間では、中国のタクシー配車アプリを手掛けるDiDi(滴滴出行)が、交通ビッグデータから、渋滞予測( 予測(Predictive) ) を行っていますが、予測データから信号機の最適化実験まで行っているそうです(※)。データを活用したルール変革が実践されています。

※ 出典: アルゴリズムフェアネス p81